こんにちは、
ともやんです。
今日、2022年1月29日は、フリッツ・クライスラーの没後60年の命日です。
フリッツ・クライスラーは、1875年2月2日生まれのオーストリア出身のヴァイオリニストです。そして1962年1月29日にニューヨークで86歳の生涯を閉じました。
名指揮者ブルーノ・ワルター(1876-1962)とほぼ同世代ですが、個人的な印象では、ワルターの録音が、コロンビア響と明快なステレオ録音で聴かれるのに対して、クライスラーは、1950年に引退し、残されている録音もSP時代の物が中心なので、より過去の人と感じてしまいます。
ただ、ヴァイオリンの小曲として粋でチャーミングな作品を多く残しているので、現代ではヴァイオリニストというより作曲家としての知名度の方が高いかもしれません。
クライスラーと東京會舘とわたしと
東京會舘の歴史を題材として小説、辻村深月さんの『東京會舘とわたし』を読んだ時に驚きました。
その第一章のクライスラーの演奏会でクライスラーが登場するのです。
そうなんです、クライスラーはこの時代の人としては珍しく来日しています。
時は1923年(大正12年)5月。
この章の主人公の寺井青年が、クライスラーの音楽会終了後に一緒に来ていた東京の出版社に勤める編集者・近藤に取り残され、その余韻に浸りながら一人で東京會館を散策していたところ、東京會館への移動中のクライスラーと地下道で偶然出会うのです。
東京會舘は、前年の1922年(大正11年)に丸の内で開業。
西洋文化が広がりつつあったこの時代に「世界に誇れる社交場」を目指しての開場でした。
鹿鳴館が「限られた上流階級の社交場であった」のに対して、東京會舘は「誰もが利用できる、大勢の人々が集う社交の場」として、その時代の人たちに愛されて行きます。
宇野功芳のクライスラー評
世代的にLPレコード全盛期にクラシックを聴き始めた僕は、SP時代を知らないので、SPでクライスラーに親しんだ人にとっては、懐かしく感じる人も多いと思います。
1930年(昭和5年)生まれの音楽評論家・宇野功芳氏もその一人でしょう。
彼は、著書で、
“クライスラーほど、音色にも弾き方にもなつかしさを感じさせるヴァイオリニストはいないだろう。昔の演奏家はピアニストにしろ指揮者にしろ、目をつぶって聴いてもすぐに誰の演奏かがわかるほど「自分の音」を持っていたものだ。”
また現代の水準からは奏法は古く、技術も完璧ではなく、音量も弱いが、温かい人柄がにじみ出るような味が絶品だ、とも記しています。
そして宇野氏は、自作自演の「愛の悲しみ」とドヴォルザークの「ユモレスク」の二曲はぜひ持っていたい、と推しています。
また大曲ではメンデルスゾーンの協奏曲が素晴らしく、クライスラーのしたたるような光が充分伝わってくる、とも書いています。
なんと言っても96年前の録音なので音の貧弱さは致し方ありません。
特にオケは、残念な状態ですが、クライスラーのヴァイオリンはよく録音されていて、甘美な音色を楽しむことができます。
クライスラー メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
フェリックス・メンデルスゾーン – Felix Mendelssohn (1809-1847)
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op. 64
Violin Concerto in E Minor, Op. 64, MWV O14
1.(12:09) I. Allegro molto appassionato
2.(07:44) II. Andante
3.(06:49) III. Allegretto non troppo – Allegro molto vivace
total(26:42)
フリッツ・クライスラー – Fritz Kreisler (ヴァイオリン)
ベルリン国立歌劇場管弦楽団 – Berlin State Opera Orchestra
レオ・ブレッヒ – Leo Blech (指揮)
録音: 9-10 December 1926, Singakademie, Berlin
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