朝比奈隆、男は度胸、明治男の気骨

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朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

 

ベートーヴェン作曲
交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
1975年10月24日 ベルリンでのライブ録音

 

朝比奈さんには、実際にお会いしたことがありませんが、あの音楽プロデューサー中野雄氏をしてもサイン会で握手した瞬間、泣きそうになったというくらいですから、相当な人物だったのでしょう。

 

1980年後半から90年代に掛けて、僕は何度か朝比奈さんのコンサートに行きました。
特に印象深かったのは、読売日響を振ったベートーヴェンの英雄で、
こんな力強い英雄は、聴いたことがない、と深く感銘を受けたものです。

 

ただ、後半になるに従い、人気とは逆に感動が薄れた印象がありました。

 

でも、舞台に立つ朝比奈さんの恰幅のいい姿と観客からの拍手を満足げに
受けていた姿は、昨日のように憶えています。

 

ああ、朝比奈さんは幸せな音楽人生を送って来られたのだなとつくづく思ったものでした。

 

そんな朝比奈さんにもいくつも苦難があったことと思います。

 

ひとつは終戦後、ハルビンからからの引き揚げ時、そして1975年のヨーロッパ演奏旅行。

 

1975年は、世界的な石油危機による不景気で、大阪フィルのヨーロッパ演奏旅行も理事会で延期の決定がされました。

 

朝比奈さん始め関係者やファンの熱意により資金集めに奔走してようやく
念願の演奏旅行を決行に漕ぎつけました。

 

それだけに支えてくれた方々の思いもあり失敗は許されない中、
ドイツの中心ベルリンに乗り込んだコンサート。

 

そんな本拠地ベルリンにて、何ものにも臆することなく、
自分の信ずるベートーヴェン演奏を行ったことは、
朝比奈さんの人間的器の大きさに他ならないと思います。

 

楽団員も目の前で堂々と指揮する朝比奈さんを観てさぞかし頼もしかったことでしょう。

 

僕は、朝比奈さんの全盛期は、この頃だったと思います。
60代後半から70代前半に掛けて、日本ではまだ朝比奈人気がブレイクする前でしたが、評論家・宇野功芳氏も絶賛する1977年の東京文化会館での英雄もこの時期で、心身最も充実していていた時期だったのでしょう。

 

この演奏旅行時の英雄と、聖フロリアン教会のブルックナーの7番は、
朝比奈さんの膨大な録音の中でも屈指の出来と思います。

 

どうか大阪からドイツの本拠地に乗り込んで、本場ドイツの聴衆を唸らせた名演をぜひぜひ聴いてください。

 



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